塗装仕様書について |
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塗装仕様書は塗装する部位ごとに適切な塗料と、その塗装工程や塗付量、次の工程に移るまでの乾燥時間などをまとめたもので、これに従って塗装屋さんが塗装することになります。
したがって、見積もこの「仕様」が決まらないと塗料の種類や工程も決まってきませんので正確な金額で提示することができません。
一般に標準的な塗装工程を「標準塗装仕様」として塗料メーカーのカタログや色見本帖などに掲載されています。
ここでは、その例として、屋根(カラーベスト瓦)の塗り替え仕様を紹介しています。 |
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■塗装仕様書の例/屋根 |
以下は塗料が[下塗り+上塗り2回]の3回塗りで、工程としては「5工程」になっています。 |
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塗装部位: |
屋根 |
適用素材: |
カラーベスト瓦 |
使用塗料: |
関西ペイント製品
Mシリコンプライマー(ベース/硬化剤=10.5/1.5)12㎏セット
ヤネMシリコン(ベース/硬化剤=13.5/1.5)15㎏セット |
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工程 |
塗料名 |
塗付量(㎏/㎡) |
塗り重ね時間(20℃) |
塗装方法 |
希釈率(%) |
一般名 |
製品名 |
1 |
素地調整 |
1.高圧洗浄機を用い水洗いを行い、ゴミ、泥、苔などを完全に取り除く。
2.古い塗膜の浮き、剥がれなどを完全にケレンし除去。
3.洗浄面は表面の水分が充分なくなるまで乾燥させる(1日~2日間放置する)特に重なり部分に水分がなくなるまで乾燥させる。 |
2 |
下塗り |
2液形弱溶剤系シリコン塗料
専用浸透形シーラー |
Mシリコンプライマー |
0.15~0.35 |
2時間以上7日以内 |
刷毛ローラー |
無希釈 |
3 |
上塗り
1回目 |
2液形弱溶剤系シリコン塗料 |
ヤネMシリコン
塗料用シンナーA |
0.20~0.25 |
4時間以上
7日以内 |
刷毛ローラー |
5~10 |
4 |
上塗り
2回目 |
2液形弱溶剤系シリコン塗料 |
ヤネMシリコン
塗料用シンナーA |
0.20~0.25 |
- |
刷毛ローラー |
5~10 |
5 |
縁切り |
上下の瓦が塗料で接着している箇所はスケラー等で縁切りを行う。
(瓦の上下に隙間がないと結露水の通気が不可能であり素材の腐食につながる恐れがあります。) |
※ |
金属部分 |
役物など金属部分については、Mシリコンプライマーの代わりにザウルスEXを塗付。 |
2 |
下塗り |
1液形弱溶剤系
変性エポキシプライマー |
ザウルスEX
塗料用シンナーA |
0.13~0.17 |
4時間以上7日以内 |
刷毛ローラー |
0~10 |
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■塗装仕様書の見かた |
この以外といえるほど簡単な表に塗装の大切な部分がまとめられています。 |
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●[工程]これは、この順番に作業を進めていきます。 |
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●[塗料名]ここには使用する塗料の一般名称と商品名が併記されています。
これは塗料の呼び方が複雑に混同して使われているためです。どんな樹脂の塗料なのかが解るように商品名とは別に、一般名も記載しています。この例の場合、上塗りに使用する塗料の樹脂はシリコン系ということがわかります。 |
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●[塗布量]これは、実際に塗料をどれだけ付け(塗る)たら、この製品の性能が発揮されるかを示したものです。したがって、必要な塗料の量はこれで計算することができます。塗装業者さんは、この数字から計算して必要な材料を手配します。
・計算例は下記に |
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●[塗り重ね時間]各工程間をどれだけ空ければいいかの時間です。
早過ぎも遅過ぎもダメです。塗料の場合、乾燥時間は「20℃湿度60%」の状態で表記されているケースがほとんどです。最新の工場内での塗装ラインなどは1年中この条件に空調されていたりしますが、建築の現場は、そうはいきません。自然が相手ですから。真冬なんかは、この時間よりも、ずっと遅くなります。特に、2液型の塗料は5℃以下では反応が進みません。 |
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●[塗装方法]ここには、この塗料の施工に合った塗装方法が記載されています。
中には、吹き付けできない塗料や、ローラーでは施工が適さない塗料もあります。誤った塗装方法で施工された場合、正常に仕上がらないケースがあります。 |
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●[希釈率]この数字は塗料をどれだけ薄めて使用するかの目安です。
薄めすぎは、塗膜が薄く仕上がりますし、薄め方が少なければ作業性と仕上がりが悪くなります。希釈に使ったシンナーや水は塗装後に揮発してなくなるので塗膜にはなりません。塗膜として残るのは、塗料の成分中で「樹脂と顔料」となります。 |
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■塗り替えに必要な塗料の缶数を計算します |
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●塗付量って聞き慣れない用語ですが、これは、どれだけの量を塗ったら、その塗料の性能を十分に発揮できるかを塗料メーカーから示されたものです。薄すめて塗ったり伸ばして塗れば、当然、薄く仕上がります。その状態で工程通り2回塗ったとしても規定の膜厚(塗料の厚み)には仕上がりません。メーカー標準塗付量に塗装する面積を掛ければ、使用する塗料の重量が出ますから、あとは製品の入り目(荷姿)で割ってやれば必要缶数が求められます。 |
[計算例] |
たとえば塗装する面積が300㎡あったとすると、少ない場合で
Mシリコンプライマーが
0.15×300=45㎏
製品が12㎏セット品だから45÷12=3.75で4缶/セット必要
ヤネMシリコンが
0.20×300=60㎏
製品が15㎏セット品だから60÷15=4で4缶/セット必要
ということになります。 |
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リットル表示の塗料(合成樹脂系に多い)は比重を掛けて㎏に換算します。
塗料ごとの比重はメーカーの製品総覧に記載されています。
ただし、この塗付量ですが標準的なもので、下地の吸い込みが多い、デコボコが多いなど下地の状況によって変化します。 |
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